IEOとICOの違いは?より安全に投資できるIEOの特徴とメリット
2020年8月25日、仮想通貨取引所のコインチェックと株式会社Hashpaletteは、日本初のIEOの実現に向けた共同プロジェクトを発足したと発表しました。
最近何かと耳にすることが多くなったIEO。これまで日本では行われておらず、いまいち理解できていない人も多いと思います。
IEOを知るためには、まずはこれまでの仮想通貨を使った資金調達方法の「ICO」について理解を深めましょう。
今回はICOの仕組みと課題、そこで登場したIEOの概要とメリットを紹介します。両者の違いを分かりやすくお伝えしていきます。
ICOとは
ICOとはInitial Coin Offeringの略称で、「新規仮想通貨公開」のことを指します。企業が仮想通貨トークンを発行して、投資家がビットコインなどの既存の仮想通貨(暗号資産)で購入する資金調達の方法のひとつです。
『トークン』は、それらの既存のブロックチェーン技術上に新たに作られた仮想通貨のことをいいます。
企業のトークンが価値を持てば多くの取引所で扱われるようになり、注目を集めることができます。
また投資家はトークンを購入することで企業のサービスを利用できたり、値上がり益を狙うこともできます。
ICOのメリット
ICOのメリットを企業側(トークン発行元)、投資家側それぞれの立場から、もう少し詳しくみていきましょう。
企業側からみたICOのメリット
企業の視点からみたICOのメリットは以下のとおりです。
- 資金返済の義務がない
- 株式公開などと比べてハードルが低い
企業はもちろん、事業やプロジェクトについて、投資家から賛同を得ることで資金を調達します。しかし、その資金には返済の義務がありません。
また、他の方法に比べて資金調達のハードルが低い点もメリットです。これまで企業が市場から資金調達をするには、株式を発行してIPO(株式の新規上場)を行うことが一般的でした。
しかし株式を公開するには証券取引所に上場しなければなりません。上場をするには審査もあり、膨大な手間とお金がかかりました。ICOではそのような手続きが不要で、より簡単に資金調達を行うことができます。
また、インターネットを通じて行うという特性上、世界中にアピールして広く資金調達することができます。
投資家からみたICOのメリット
一方で資金を拠出する投資家側からみたICOのメリットには、以下のような点が挙げられます。
- 売買で値上がり益が狙える
- トークンでゲームなどの企業のサービスが利用できる
株式などと同様に、購入したときよりもトークンの価格が上昇した場合、売却することで値上がり益を狙うことができます(株式でいう「キャピタルゲイン」です)。多くの投資家はこの値上がり益を狙ってICOに参加しています。
また、トークンは発行元が提供するゲームやサービスなどで、貨幣として利用することもできます。トークンに貨幣と同等の価値があれば、投資の心理的なリスクを下げることもできます。
ICOのデメリットと現状
しかし、ICOには決して少なくないデメリットや課題があり、2020年現在、市場は以前と比べて縮小しています。日本では、問題点も多いことからほとんど利用されていないようです。
ICOでは以下のようなデメリットがあります。
- 法整備が追いついていない
- 急に禁止されたり、価格が大きく下落するリスクがある
- 投資家は詐欺に遭うこともある
これらのデメリットの最大の要因は、法整備の不十分さにあります。国によってはICOを全面的に禁止していることもあり、企業・投資家双方に大きなリスクがあります。
投資家の立場からすると、法律やルールが整備されることで、急に取引が規制されたり、プロジェクトが終了してしまう可能性もあります。また投資である以上、トークンの価格が下落するリスクにも注意を払わなければいけません。
さらにICOでは、投機的な資金に注目した組織による詐欺まがいの行為が横行している点も問題視されています。自由である一方で、投資家の保護体制が十分に整っていないのが現実です。
以上のことから、ICOは投資家の自己判断に委ねられる部分が大きく、決してリスクは小さくない投資と言えます。
IEOとは
ICOにはメリットがある一方で、主に保証の面でデメリットがあり、縮小の傾向にあります。そこで、「安全性」「健全性」を重視した方法としてIEOが注目されるようになりました。
IEOとはInitial Exchange Offeringの略称です。「仮想通貨を使って、企業がプロジェクトの推進のために資金を調達する方法」という点では、ICOと同じです。最も大きな違いは、トークンの売られ方です。
IEOは発行元から委託を受けた仮想通貨取引所がトークンを販売します。トークンの発行の際は、取引所が発行元の企業を審査します。
IEOのメリット(ICOと比較して)
IEOはICOのデメリットを補う、新しい手法として注目されています。メリットを発行元/投資家、それぞれの視点で見ていきましょう。
IEOの発行元のメリット
IEOの発行元(企業)のメリットは以下のとおり。
- 取引所がIEOの実施を告知してくれるので、多くの人に情報が届く
- 取引所の介在によって、投資家から信頼を得られる
- 投資家の募集を自社で行わなくてもいい
IEOを実施する場合、その告知は取引所が行ってくれます。ICOでは企業自らが告知を行わなければなりませんでした。ICOを行う企業は知名度が低いことも多く、情報が投資家に届かないという課題がありました。
取引所にはすでに多くのユーザーが集まっているため、これまでとは比べものにならないほどの情報の拡散が期待できます。
また、取引所が審査を行うことで、投資家からの信頼を得られます。IEOに参加している時点で、審査に通過している企業というお墨付きがもらえます。
募集を事業者自ら行わなくてもいいということは、情報の拡散力だけでなく、手間を考えても大きなメリットです。
IEOの投資家のメリット
一方でIEOの投資家側からみたメリットを確認しましょう。
- 必ず上場するので値上がりが期待できる
- ICOよりも情報を得やすく、参加しやすい
- 取引所が審査を行うので安心
IEOで発行されるトークンは取引所での上場を前提としています。IEOに参加すると、投資家は一般に取引される前の価格でトークンを購入できます。値段は公開価格よりも低く設定されており、上場後には売却すれば高い確率で値上がり益を狙えます。株式売買のIPOに似た特徴を持っています。
また、IEOは取引所に登録さえすれば、誰でも参加できます。取引所から告知があるため、ICOと比べて情報を仕入れやすく、参加もしやすい点が魅力です。
さらに取引所が審査をするので、ICOのような詐欺行為はまず起こらないと思って良いでしょう。純粋に事業に成長性があるかどうかを判断して、投資できるようになります。
IEOの課題
しかし、IEOにも課題はあります。
- 長期的に価格が下落する可能性
- 上場後の即売りの問題がある
IEOの購入の権利を得た人は、上場直後の値上がり益を期待できます。しかし、多くの場合、取引所に上場されたトークンは大きく値下がりする可能性はあります。
トークンが上場後に即売却されることが想定されるためです。
また、IEOに参加し購入したいけれども買えないという事は起こってくるでしょう。株式のIPO同様、IEOの募集についても人気化するトークンは抽選でもなかなか当たらないという事が考えられます。
IEOとICOの違いまとめ
ICOもIEOも、企業が仮想通貨を発行することで資金調達をする手段です。ICOは企業自らトークンを販売しますが、IEOでは仮想通貨取引所が販売します。
IEOでは取引所が企業に対して審査を行うので、投資家はより安心して投資できるようになると期待されています。
最後にもう一度IEOとICOの違いをまとめておきます。
ポイント |
IEO |
ICO |
---|---|---|
トークンの販売 |
仮想通貨取引所 |
企業自ら |
審査 |
取引所による審査 |
審査なし |
告知 |
取引所が告知 |
企業自ら |
上場 |
決定している |
未定 |
参加者 |
取引所の登録者 |
制限なし |
日本初のIEOがコインチェックで予定されています。
※ 2021年度内の提供開始を目指すとの事です。(2021年4月27日決算説明資料より)
参加するかどうかは、そのときに決めればよいのですが(私は参加予定(笑))、今の内に口座開設をして準備はしておきましょう。