【比較】IEOとIPOの特徴と違いを9の項目で比較
今、仮想通貨取引で注目されているIEO。
企業が仮想通貨を発行して、市場から資金調達を行う新しい手法です。そんなIEOは、一部では「仮想通貨版のIPO」とも呼ばれているようです。
IEOは株式のIPOと似ているところが多く、比較されることもしばしばあります。
今回はIEOとIPOの基本と共通点を確認した上で、その違いがどこにあるのか、IEOならではのメリットを紹介します。
IEOのメリットとデメリットを詳しく知りたい人は、以下の記事を参考にしてください。
IEOとIPOの基本と共通点
IEOはInitial Exchange Offering(イニシャル・エクスチェンジ・オファリング)の略称です。
IEOを行いたい企業は仮想通貨トークンを発行し、仮想通貨取引所に売買業務を委託をします。
取引所は企業やプロジェクトの審査を行い、問題がなければ、投資家に対してトークンを販売します。集まった資金は取引所が手数料を差し引き、企業に渡ります。
一言でまとめると「企業が取引所を通して仮想通貨を売買することで資金調達する方法」がIEOです。
IEOのメリット
そんなIEOのメリットとデメリットを確認しておきましょう。
- 株式公開と比べてハードルが低い(企業)
- 取引所が告知から販売まで行ってくれる(企業)
- 投資のリスクが小さくなる(投資家)
これまでだと、市場から広く資金を調達をするには、上場をすることが一般的でした。しかし、上場をするには時間や金銭面でハードルが高く、簡単にできるものではありませんでした。
IEOは上場企業になること(IPO)と比較すれば、簡単な手続きで済みます。
また、取引所がIEOの告知から募集、販売まで行ってくれるのも大きなメリットです。労力が軽減されるだけでなく、広く投資家に情報をリーチすることができます。
投資家としては、取引所が審査をした企業・プロジェクトが対象になるので、投資判断のリスクを軽減できます。
IEOのデメリット
一方で、IEOには以下のようなデメリットも。
- 上場後の価格の変動が大きい
- 今後、規制が強化される可能性がある
IEOは、市場がまだ新しいという事があり、上場後の値動きは激しくなることが予想されます。価格変動が大きいことから「投機的」な側面を持ち合わせています。
また、今後の法規制によっては取引に制限がかかる可能性もゼロではありません。
IPOのメリット
一方でIPOについても簡単に振り返っておきましょう。
IPOはInitial Public Offeringの略称で、「新規公開株」「新規上場株式」のことを指します。未上場の企業が、新たに証券取引所に株式を上場し、投資家がそれを取得します。
IPOには以下のメリットがあります。
- 上場によって市場から資金調達が可能になる(企業)
- 知名度や社会的な信用が上がる(企業)
- 利益を出せる確率が高い(投資家)
企業は上場することによって、多くの投資家から資金調達ができるようになります。また、上場することによって社会的な信用が手に入り、企業の知名度の向上も期待できます。
また、投資家が利益を出しやすい投資であることは、近年IPOが一般的に知れ渡るようになった大きな要因です。
IPOでは公募価格が割安に設定されるため、上場後の最初の取引で売却することで大きな利益を出せる可能性があります。
例えば2019年は1年間で86社がIPOを行いましたが、実に70社以上で初値が公募価格を上回りました。つまり、IPOに参加できれていれば、約8割の確率で利益を上げることができたのです。
IPOのデメリット
もちろん、IPOにもデメリットがあります。
- 上場には費用と時間がかかる
- 公募割れする可能性もある
- 当選確率が低い
- 申込みで資金が拘束される
企業が上場するには多額の費用と時間がかかります。上場までに5,000万円、少なくとも3年程度が必要というデータもあります。
投資家の視点では、IPOでは1、2割は初値が公募価格を下回る「公募割れ」が起こります。
また、応募したことがある人なら実感しているかと思いますが、IPOはとても当選確率が低いです。数年間応募を続けて、一度も当選できないことも珍しいことではありません。
証券会社によっては、IPOに申し込むことで資金が拘束されるので、その間は他の投資が行えず機会損失にもなります。
IEOとIPOの共通点
上記のIEO、IPOの特徴から共通点をまとめておきましょう。
- 不特定多数を対象にした資金調達
- 市場、取引所への上場によって企業・プロジェクトの知名度が上がる
- 売買益を出しやすい
- 投資家は将来性のある企業に投資(支援)できる
企業は仮想通貨または株式を上場することで、広く投資家から資金調達を行えること、上場によって大きく知名度と信用が上がること、投資家は購入できれば利益を得やすいこと、成長性のある企業に投資できるといった点が、共通したメリットと言えます。
IEOとIPOの仕組み的な違い
前置きが長くなりましたが、ここからはIEOとIPOの違いを解説していきます。まずは両者の制度、仕組み的な部分での違いを見ていきます。
- 資金調達の方法
- 企業のコストと準備期間
資金調達の方法が異なる
企業が資金調達をする方法が異なります。IEOではトークンを発行して資金調達を行い、IPOでは株式を発行します。
トークンはそれ自体に通貨のような価値があり、例えば発行元が提供するゲームやサービスをトークンを利用して購入することができます。
IEOは時間的・金銭的コストが低い
先にも説明したとおり、IPOで企業が上場するには、多額の費用と長い準備期間が必要です。
それと比較した場合、IEOは取引所の審査と手数料が発生するとは言え、資金調達のハードルはかなり抑えられます。
投資対象としてのIEOとIPOの違い
一方、投資家から見た場合のIEOとIPOの違いを、以下の項目で見ていきましょう。
- 議決権
- 必要な初期費用
- 参加の手間・ハードル
- 件数
- 当選確率
- リターン
- 投資リスク
議決権(出資者の権利)┃IPOは株主になれる
IPOは株式への投資です。投資家は株式を取得することでその企業の株主になり、議決権を得ることができます。また、株主への特典である「株主優待」の権利も得られます。
IEOにはそのような株主が得られるメリットを受けられませんし、配当金もありません。
必要な初期費用┃IEOは仮想通貨の購入が必要
IEOに参加するには、その取引所が発行する仮想通貨を購入するか日本円を入金する必要があります。その取引所によって取り扱いは変わります。
例えば、海外の取引所「Binance(バイナンス)」の場合、バイナンスコイン(BNB)を50以上保有していることがIEO参加の条件です。2020年9月現在、50BNBは日本円で約12万円で購入できます。
また、当選した場合は、1枚の抽選券(50BNBの場合)につき、200〜300ドル分のトークンが購入できます。
IPOは事前入金なしで抽選に参加できる証券会社もありますが、基本的には、その株式を購入するための資金を事前に口座に入れておく必要があります。
バイナンスについては、私も口座を持っていて利用したこともあり、IEOにも参加したいとは思っていましたが、バイナンスは日本の暗号資産交換業者登録がされていません。
また、その事で金融庁の警告を受けている事と、ホームページ上での日本語対応をバイナンスが外した事もあって、現在は利用していません。
参加の手間・ハードル┃IEOは国内では参加できない
2020年9月現在、国内でIEOに参加できる取引所はありません。そのため海外の取引所を利用する必要があり、ハードルは高めです。
IPOであれば、国内の証券会社で参加できます。各会社でわかりやすく案内しているので、初心者でも参加しやすい投資と言えます。
投資の件数┃IPOの方が多い
IEOの投資対象は非常に限られているのが現状です。上記のバイナンスの場合、2019年から1ヶ月に1回程度のIEOを行ってきましたが、2020年は3件程度にとどまっています。
一方、国内では2019年は86社がIPOを行いました。2020年は新型コロナウイルスの影響で上場を中止する企業も出ていますが、それでもIEOよりは件数は多いです。
当選確率┃IEOの方が高いことも
バイナンスの12回目のIEOとなった「Wazirx」の場合、抽選券としての当選確率は7.31%、参加者の43.74%が当選したと言われています。
しかし、IPOではそこまでの当選率は望めません。複数の証券会社の口座を利用すれば多少の確率は上がりますが、小型のIPOで0.1〜0.5%、大型IPOでも10%程度の当選確率です。
リターン┃ともに初値で大きな利益が期待
例えば、2019年1月にバイナンスで行われたIEO「BitTorrent」は開始18分間で終了したことで話題になりましたが、上場3日で6倍にまで値上がりしました。
2019年のIPOの初値上昇率で1位だったサーバーワークスは、3.76倍の初値をつけました。単元株(100株)を初値で売却した場合、132万円の利益を得られたことになります。
リスク┃IPOはセカンダリー投資も狙える
IEOは上場後に価格が高騰したあと、下落する傾向にあります。実に8割のトークンが、上場後に値下がりしています。初値売りでは大きな利益を上げられる確率が高いですが、現状は長期投資には向きません。
IPOは8割以上は初値で値上がりすることは紹介しましたが、IPOに参加できなかったとしても、上場後にIPO株を購入して、その後の成長から利益を狙う「セカンダリー投資」を行う投資家も多いです。
まとめ
IEOとIPOの違いをまとめておきましょう。
IEO | IPO | |
---|---|---|
資金調達方法 | トークン(仮想通貨) | 株式 |
準備期間・コスト | 短い・低い | 長い・高い |
議決権・優待等 | なし | あり |
参加のハードル | 高め (国外取引所) |
低め (国内証券会社) |
投資件数 | 1件/月程度 (バイナンスの場合) |
87件 (2019年国内) |
当選確率 | 比較的高い | 低い |
上場後の初値 | 10倍を超えることも | 最大3~4倍程度 (2019年) |
リスク | 上場後は下落傾向 | 長期保有も可 |
2020年9月現在、国内ではIEOに参加できません。そのため、IEOの方が投資ハードルが高いですが、当選確率や期待リターンはIPOよりも高めと言われています。
ちなみに、国内初のIEO実現に向けてコインチェックなどがプロジェクトを開始しました。国内の取引所 でIEOに参加できるようになれば、日本でもIPOのように人気が高まりそうです。
※あくまで今回紹介したリターンやリスクは一例です。投資は自ら情報収集を行い、自己判断で行ってくださいね。