今さら聞けないNFT(Non-Fungible Token)の基本と活用例を紹介
NFT(Non-Fungible Token)。
仮想通貨(暗号資産)の話題の中で、最近目にすることが多くなった「NFT」というキーワード。
一般的な投資家には馴染みが薄く、理解するのが難しい概念かもしれません。しかし、NFTは今後、さまざまな場面での活用が期待されている技術で、基本的なことは知っておくに越したことはありません。
今回はNFTとは何なのか、活用例や今後の展望について解説します。
NFTとは?
NFTとは「Non-FungibleToken(ノンファンジブル・トークン)」の略称で、日本語では「代替不可能なトークン」と訳されます。
ここで言う「トークン」とはブロックチェーン技術を使って発行された仮想通貨のことと捉えてOKです。
つまり「代替不可能な仮想通貨」という意味になります。
ただ、これだけでは理解できないですよね。
そこで、代替可能なものと不可能なものを、身近な例で見ていきます。
「Fungible(代替可能)」と「Non-Fungible (代替不可能)」の違い
Fungible(ファンジブル=代替可能)なものの例として円やドルなどの法定通貨が挙げられます。
私が持っている1,000円札も、あなたが持っている1,000円札も価値は同じです。私の1,000円札ではりんごが3個買え、あなたの1,000円札では4個買える、ということはあり得ません。
1,000円札を交換したとしたも、価値は同じです。つまり「代替可能」です。
一方でNon-Fungible (ノンファンジブル=代替不可能)の例として「本田圭佑選手のスパイク」を挙げてみます。
一般人が草サッカーで使っているスパイクと、W杯に3回も出場した本田選手が使っているスパイクは、仮に同じモデルだったとしても、市場で取引される価値は大きく変わってきます。
同じものでも「本田選手が使った」という価値が加わることで、「代替不可能」なものになるということです。
そのような視点を持てば、私たちのリアルな世界には「ファンジブル=代替可能」なものよりも、「ノンファンジブル=代替不可能」なものの方が、圧倒的に多いことに気付くと思います。
Fungibleではないトークン「NFT(Non-Fungible Token)」
その違いを意識して、もう一度NFTを見てみましょう。「代替不可能なトークン」とは、
といった特徴があります。
ファンジブルなトークン(ビットコインなど)がそれを使うときに価値を発揮するのに対して、ノンファンジブルなトークンが価値を発揮するのはそれを持っているときです。
つまり、何らかの「所有権」を扱うことに向いているトークンと言えます。
NFTはイーサリアム(通貨およびプラットフォームの名前)の「ERC721」という規格で発行されます。
NFTの活用例(具体例)
ここまではかなり概念的な話になってしまったので、具体的にNFTがどのように利用されているのか、具体的をいくつか紹介します。
「持っているときに価値を発揮する」ということを意識すると、わかりやすいかもしれません。
ゲームのキャラクター・アイテム
引用元:https://www.cryptokitties.co/
NFTは現状、ゲーム分野で活用されることが多いです。と言うのも、NFTが注目されたのが「CryptoKitties」とうゲームで利用されたことがきっかけだったという経緯があるからです。
CryptoKittiesは猫を配合したり、売買したりできるゲームです。猫にはそれぞれ、識別子が与えられていて、同じ猫は世界に一匹として存在しません。
世界に同じ猫が存在しない=唯一無二のものを扱うのに、NFTが最適だったのです。
その他にもゲームのキャラクターやアイテムにNFTは利用されており、アイテムの希少性が担保され、そのアイテムやキャラクターの価格の正当性が保証されます。
アクセス権
ネットコンテンツやソフトウェアなどへのさまざまなアクセス権も、NFTとの相性がよい例です。
例えば、世界的な経済誌のForbesは、ネット記事を読むときに出てくる広告を表示しないようにする会員権をNFTとして発売しました。
会員権には30日間有効なものと、7日間有効なものの2種類が用意されました。会員権は仮想通貨のイーサリアムで購入できます。
また会員は、仮にメリットを感じられなかった場合など、その会員権(NFT)を他のユーザーに売却することもできます。権利の二次流通ができることで、コンテンツの流動性が上がる(いろいろな人に利用される)ことが期待されます。
外部参考:NFT(Non-Fangible-Token)を活用した各社の取り組み
知的財産権
NFTはソフトウェアなどの知的財産権の保護にも大きく貢献すると言われています。
NFTはブロックチェーン技術で管理され複製ができないため、現在インターネット上に溢れる不正コピーを防ぐことにも活用できると期待されています。
コンテンツの所有権
「持っていることに価値がある」というNFTの特徴から、さまざまなものの「所有権」を管理する活用例もあります。
日本初のNFTのマーケットプレイス(取引所)「bazaaar」を運営するBlockBase社は、音源ファイルの一部をトークン化して配信する実験を始めています。
音楽は様々な権利が絡むコンテンツですが、トークンの保有者は著作者や管理団体に、使用許可を得ること無く、自由に音源を利用できます。
また、Anique社は、アニメやマンガ・ゲームなどの作品の「アートワーク所有権」を取引できるサービスを始めました。
好きな作品の所有権を購入すると、限定作品の購入や資料の閲覧権がもらえ、また権利の売買もできます。
外部参考:可能性を秘めたNFTの活用と将来性
コインチェックによる日本初のIEOでもNFTを活用
先日、日本の仮想通貨取引所「コインチェック」は、日本初のIEO実現に向けたプロジェクトを発表しました。
IEOとは企業が仮想通貨を発行して市場から資金を調達する手法です。
今回のプロジェクトでコインチェックは、パートナーのHashpalette社とともに、仮想通貨「パレットトークン(PLT)」を発行します。PLTはマンガやアニメなどのコンテンツのためのプラットフォーム「Palette(パレット)」で利用されます。
引用元:https://corporate.coincheck.com/
パレットではNFTが活用される
このパレット(プラットフォーム)ではマンガやアニメ、スポーツ、音楽などを楽しめる権利がNFTで販売されます。
ファンはNFTを購入してコンテンツを楽しむことができ、ファン同士でNFT(権利)を売買することもできます。
このプロジェクトは2021年の実現が予定されており、実現すれば、NFTがより私たちの身近なものになることでしょう。
NFTの今後
見てきたように、NFTには
- 変更できない
- 替えがきかない
- 固有の価値・独自性・希少性がある
といった特徴がありました。
そして、繰り返しになりますが、NFTは「使うときにではなく、持っているときに価値が発揮される」という特性があります。
身分証明などのライセンスの証明、飛行機・ライブチケットの売買、売掛債権の証券化など、ビジネスから私生活まで、今後私たちの生活でNFTが活用される場面は、どんどん増えていくことが予想されます。