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事業主貸と事業主借について/個人事業主の複式簿記【確定申告】

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個人事業主の複式簿記で「事業主貸」「事業主借」という勘定科目を使います。

法人では使わない勘定科目なので、特に個人事業主になったばかりの人には馴染みがないかもしれません。

今回はこの事業主貸と事業主借の使い方を、仕訳の例を交えながら、分かりやすく説明していきます。

  • 個人事業主になったばかりの人
  • いまいち「事業主貸」と「事業主借」が分かっていない

という人はぜひ、参考にしてください。

動画でも解説しています。

 

事業主貸と事業主借とは?

 

冒頭でも触れましたが、事業主貸と事業主借はともに、個人事業主の経理で使う勘定科目です。法人で使用することはありません。

 

個人事業主は原則、事業用と家庭用の口座を分ける

 

前提として個人が事業を行う場合は、事業に対する入金や支払いを行う事業用口座と、生活費やプライベートの支払いを行う家庭用口座を分けることをおすすめします(分けておいた方が、のちのちの経理処理が楽になります)。

しかし口座を分けたとしても、事業用の口座からプライベートの支払いをしたり、その逆で家庭用口座から事業の費用を立て替えるなど、完全に分けることができないこともあります。

そんな時に使用するのが事業主貸と事業主借です。

 

家庭用口座について

ちなみに、口座は2つに分けますが、帳簿で管理するのは事業用の口座のみです。家庭用の口座まで、すべての収支を記録する必要はありません。

 

事業主貸を使う場合

 

ここからは事業主貸と事業主借の実際の使い方を見ていきます。まずは事業主貸からです。

事業主貸の科目が使われるのは、具体的に以下のようなケースです。

  1. 事業用の口座から生活費の引き出しをした場合
  2. 事業用の口座からプライベートの支払いをした場合
  3. 事業用の口座から支払った経費の中にプライベートの支払いが混在している場合

それぞれ具体的に解説します。

 

①事業用の口座から生活費の引き出しをした場合

 

個人事業主の場合、入ってくるお金のほとんどは「事業用口座」に振り込まれます。そのため、事業用口座から家庭用の口座へまとめて生活費を引き出すことがあります。

例えば、事業用口座から生活費を15万円引き出した場合の仕訳は以下のとおり。

 

借方(かりかた)

貸方(かしかた)

事業主貸

150,000

普通預金

150,000

貸方には普通預金からの引き出し分が記入され、借方に事業主貸が使われます。

 

事業主貸、事業主借どちらか迷ったら

特にはじめの頃は事業主貸と事業主借のどちらを使えばいいのか分からなくなってしまうことが多々あります。

その場合は、

  • 事業のお金を事業主に貸す(事業主に支払う)→事業主貸
  • 事業のお金を事業主から借りる(事業主から受け取る)→事業主借

として覚えると、どちらを使えば良いのか判断しやすくなります。

 

②事業用の口座からプライベートの支払いをした場合

 

例えば、事業用の口座からプライベートの電話料金5,000円が引き落とされたとします。その場合の仕訳は以下のとおりです。

 

借方(かりかた)

貸方(かしかた)

事業主貸

5,000

普通預金

5,000

事業で使う電話料金は「通信費」として計上しますが、この場合はプライベートの支払いなので、経費にはせず「事業主貸」(事業主への支払い)として記録します。

 

③事業用の口座から支払った経費の中にプライベートの支払いが混在している場合

 

一つの支払いに事業に関わる経費とプライベートに関わるものが混在しているパターンもよくあります。

例えば「1階が店舗、2階が自宅」という店舗付き住宅で、家賃の10万円支払ったとします。その場合の仕訳は以下のとおりです。

 

借方(かりかた)

貸方(かしかた)

事業主貸

50,000

普通預金

100,000

地代家賃

50,000

   

※1階、2階の面積が同じと想定

事業用の口座からは10万円が支払われますが、その中身は店舗用の家賃(地代家賃)と居住用の家賃(事業主貸)に分かれます。居住用の家賃は経費にはならず事業主貸(事業主への支払い)です。

 

経費にしがちなよくある間違い

 

事業主貸に関して、個人事業主が誤って経費にしがちな項目があります。以下で紹介するものは特に注意しておきましょう。

  • 所得税や住民税
  • 国民年金、健康保険、生命保険、ふるさと納税など

所得税や住民税は経費になりません(よく「租税公課」として計上されていることがあります…)。

国民年金や健康保険なども経費になりません。ただし、確定申告で利益を計算するときに「所得控除」として全額を所得から差し引くことができます。

事業用の口座でこれらの支払いを行っている場合は、経費にはせず「事業主貸」を使いましょう。

 

事業主借を使う場合

 

次に事業主借を使う場合を見ていきましょう。 以下のようなケースでは事業主借を使います。

  1. 家庭用の口座から事業用の口座に入金した場合
  2. 家庭用の口座から事業経費を支払った場合
  3. 事業用口座で預金利息の受け取りがあった場合

具体的に見ていきましょう。

 

①家庭用の口座から事業用の口座に入金した場合

 

例えば、家庭用口座から事業用の口座に10万円の入金をしたときの仕訳は以下のとおり。

 

借方(かりかた)

貸方(かしかた)

普通預金

100,000

事業主借

100,000

借方に入金分が記入されます。貸方には事業主から事業口座に入金を受けたと考えて、事業主借を使います。

 

②家庭用の口座から事業経費を支払った場合

 

プライベートの口座から事業に関係する支払いを行ったときです。ちょっとしたものを買うときなど、個人事業主の場合はよくあるケースですね。個人の口座から払った場合でも、経費にすべきものはしっかりと計上しましょう。

例えば、家庭用の口座から仕事用のプリンターインクを1,500円で購入した場合。

 

借方(かりかた)

貸方(かしかた)

消耗品費

1,500

事業主借

1,500

家庭用口座(管理外)からの支払いなので、仕訳に預金の動きは出てきません。経費に計上する消耗品費は、事業主から入ってきたお金を使うという考え方にもとづいて事業主借を使います。

 

③事業用口座で預金利息の受け取りがあった場合

 

事業用の口座に利息が入金されることがあります。例えば、事業用口座に5円の入金があった場合は以下のように考えます。

 

借方(かりかた)

貸方(かしかた)

普通預金

5

事業主借

5

口座残高が増えた分は借方に計上します。貸方には法人の場合は「受取利息」として所得を計上しますが個人では事業主借を使います。

個人の場合、銀行の利息は「利子所得」として、事業の所得とは分けて考えます(所得の「区分」が異なります)。事業外の所得になるという考え方で事業主借を使います。

 

利子所得の確定申告

利子所得に関しては、確定申告では所得として申請する必要はありません。利息を受け取る時点で、すでに所得税等が源泉徴収されているからです。

 

まとめ

 

事業主貸は家庭用口座への出金や、事業に関係のない支払いをしたときに計上する科目です。

事業主借は家庭用口座からの入金や経費の支払い、事業に関係がない入金を計上するときの科目です。

また、個人事業主は事業用口座と家庭用口座を分けて管理することが基本です。

事業用と家庭用の口座が同じ場合、本来は記録しなくても良いはずのプライベートの支出まで事業主貸を使って記録することになり、経理がわかりにくくなります。

最初は少し大変かもしれませんが、事業用口座と家庭用口座を分けた上で、各種引き落しも振り分けておくことをおすすめします。

そうすることで事業主貸、事業主借を使った仕訳の数を大きく減らせて楽になるだけでなく、事業のお金の流れも明快になります。

 

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