新型コロナウイルス感染症特別貸付/実質利子負担ゼロ、借換えにも対応【日本政策金融公庫】
新型コロナウイルスが猛威を奮っています。
国民の生活や中小企業の活動に対して、これまでとは段違いの影響が出ています。
私は20年近く税理士の仕事をしていますが、ひとつの要因が、ここまで大きな影響を与えたような出来事は、これまでありませんでした。
そんな中で、今回は利率も低くて借り換えにも有利な、日本政策金融公庫が行う融資制度「新型コロナウイルス感染症特別貸付」について解説します。
この緊急事態に、積極的に活用していただきたい貸付制度です。
動画での解説はこちらからとなります。
新型コロナウイルス感染症特別貸付の特徴
この貸付制度の概要は以下のとおりです。
- 既存の貸付とは別枠での融資
- 無担保で借入をすることができる
- 利率は低く設定
- 利子補給により利息の3年分を補填してくれる制度あり
- 融資を受けるための手続きが簡素化
- 借入の返済期間も設備20年以内、運転資金15年以内(据置期間5年以内)
特別貸付の対象
日本政策金融公庫のホームページから貸付制度の詳細をみることができます。
新型コロナウイルス感染症特別貸付|日本政策金融公庫
貸付の対象が「国民生活事業」と「中小企業事業」に分かれていますが、融資の内容はほぼ同じです。
- 国民生活事業…小規模な事業者、新規事業者など
- 中小企業事業者…中小企業基本法に定められた中小企業
以下では「国民生活事業」について確認をしていきます。
「実質無利子化」について
次のページから、貸付制度の「実質無利子化」についての詳細を確認できます。
「新型コロナウイルス感染症特別貸付」と「特別利子補給制度」の併用による実質的な無利子化融資のご案内
「貸付の制度」と「利子の補給制度」、それぞれを分けて見ていく必要があります。
「新型コロナウイルス感染症特別貸付」を「特別利子補給制度」を用いることによって、実質無利子で借入ができるようになります。
以下、貸付制度と利子補給制度をそれぞれみていきます。
新型コロナウイルス感染症特別貸付
貸付の内容を確認していきましょう。
貸付の対象
貸付の対象は以下のとおりです。
新型コロナウイルス感染症の影響を受けて一時的な業況悪化を来し、次のいずれかの要件に該当する人で、中長期的に業況が回復し発展が見込まれる人
(1)最近1ヵ月の売上高が、前年または前々年の同期と比較して、5%以上減少
(2)業歴が3ヵ月以上1年1ヵ月未満の場合等は、最近1ヵ月の売上高が、次のいずれかと比較して、5%以上減少
①過去3ヵ月(最近1ヵ月含む。)の平均売上高
②令和元年 12 月の売上高
③令和元年 10~12 月の平均売上高
融資限度額
融資限度額は別枠で6,000万円です。
返済期間
借入の返済期間は設備20年以内、運転資金15年以内(どちらも据置期間5年以内)と、長く取られているのも特徴です。
※据置期間…元本の支払いをしなくてもいい期間。利子については支払う必要がある。
実際の返済期間は事業内容などによって、企業毎に異なります。
利率
借入金3,000万円以下の部分については次のとおりです。
- 当初の3年間…基準(災害)−0.9%
- 3年経過後…基準(災害)
現状の基準利率は1.36%なので、当初の3年間の利率は0.46%になります。4年目以降は1.36%になりますが、それでもかなり低い利率です。
担保
無担保で借入れることができます。
仮に以下で説明する利子補給の制度がなかったとしても、非常に条件の良い貸付です。
特別利子補給制度
補給制度の内容は以下のとおりです。貸付と紐付いた制度になっています。
補給率
利子補給制度は、貸付制度における、3,000万円以下の当初3年間の利率1.36%部分について、一旦支払ったあとに、全額補給してもらえる制度です。
つまり、3年目までの利率が実質0になります。
対象
貸付を受けている人で、次のいずれかに該当する人が対象です。
|
小規模事業者 |
中小企業者 |
個人 |
要件なし |
売上高▲20%以上 |
法人 |
売上高▲15%以上 |
売上高▲20%以上 |
※小規模事業者とは卸・小売業、サービス業は「常時使用する従業員が5名以下の企業」、それ以外の業種は「同 20 名以下の企業」
※中小企業者とは小規模事業者以外の中小企業
売上の比較は、貸付の際に確認する最近1ヶ月に加えて、その後の2ヶ月を含めた3ヶ月間のうちで判定します。
3ヶ月のうち、いずれか1ヶ月で上記の売上高の減少(15%~20%)があった場合は、給付の対象になります。
提出書類
提出書類は以下から確認することができます。かなり簡素化されています。
【国民生活事業】 「新型コロナウイルス感染症特別貸付」のお申込時にご提出いただく書類
提出書類は全部で6種類
法人営業の場合に必要な書類は以下のとおりです。
- ①借入申込書
- ②売上減少の申告書
- ③最近2期分の確定申告書・決算書のコピー ※
- ④履歴事項全部証明書、登記簿謄本(原本)
- ⑤商売の概要
- ⑥創業計画書
※法人税申告書、決算報告書、貸借対照表、損益計算書、勘定科目内訳書
なお、④~⑥は初めて日本政策金融公庫の貸付を受ける場合のみ、提出が必要になります。
①借入申込書
以下のページから印刷して使うことができます。
https://www.jfc.go.jp/n/service/pdf/mousikomi190701_dl.pdf
なお、借り換えを行う場合は、その旨をメモでもいいので同封しておくと、先方の担当者にもわかりやすく、手続きもスムーズです。
②売上減少の申告書
以下のページから印刷して使うことができます。
https://www.jfc.go.jp/n/service/pdf/kokumin_sinkokusho_200403.pdf
業歴が1年1ヶ月以上の場合は、上の記載例のオレンジの部分だけを記入すればいいので、とても簡単です。
提出の方法は郵送がおすすめ
提出はインターネットでも行うことができます。
インターネットの場合、申込み後に担当者から書類提出の依頼の連絡があり、その後に郵送をする、という流れになりますが、とても時間がかかります。
そのため、先にこちらから必要な書類を郵送してしまった方が、手続きを早く進めることができるのでおすすめです。
まとめ
新型コロナウイルス感染症特別貸付では、売上が5%以上減少した場合に、借入を受けることができます。
融資の限度額は別枠で6,000万円まであり、利率は3,000万円以下の部分については、当初の3年間は0.46%の実質利率になります。
さらに利子補給があるので、該当した場合、3年間の利率が実質0になります。
なお、貸付は借り換えの場合でも適用されるので、既に融資を受けている人にもメリットがある制度になっています。
借入当初の3年間、借換え部分の利率についても、-0.9%が適用されます。
利子補給については対象外です。
新型コロナウイルスによって、事業に大きな影響が出た場合は、積極的にこの融資制度を活用して下さい。